6月
23
2011
今日はヒブワクチンについてのお話しです。
○接種スケジュールは…?
ヒブワクチンンは生後2カ月から5歳未満までが対象になるワクチンです。
接種回数は7カ月未満のお子さんで合計4回、7カ月~1歳未満で3回、1歳以上は1回です。しかも最後の1回はその前より1年明けて行います。
例えば生後2カ月で初接種した場合、4~8週ごとにあと2回接種します。そして3回目からちょうど1年後に最後の追加接種をするのです。
また生後8カ月で初回の場合4~8週後に2回目を、そして更に1年後に追加接種をしていただきます。
○ワクチンの効果のほどはどうなのでしょうか?
ワクチンを接種した児の抗体保有率(…つまり成功率)は90%以上で、成功率の高い優秀なワクチンといえます。
○副反応にはどんなものがあるのでしょうか?
副反応としては主なものに“発熱”“硬結”があります。これらの反応が起こる確率はそれぞれ1~4%と約50%です。しかし全身に影響を及ぼすほどではないこと、他のワクチンでもこのようなことは起こり可能性があり特別なことではないことを記しておきます。
○気になる同時接種について
今年の春にヒブワクチンと他のワクチンの同時接種を行った後に死亡したケースが立て続けにありました。このようなことから同時接種を希望する方が激減したように思います。
しかし確実に言えることは「同時接種が原因とは断定できない」ということだけです。
医療は100%安全というわけにはいきません。世界中でワクチンによって亡くなるケースは、残念ながら少数とはいえ存在します。今回のケースも“同時に行ったどれか”のワクチンが原因かもしれません。つまり同時接種でないからといって安心・安全とは言い切れないのです。
接種するのか?時期をずらして接種するのか?同時に接種するのか?…悩みは尽きませんが、こちらから提案させていただく答えもないというのが実情です。
6月
22
2011
名古屋第一赤十字病院地域医療連携学術講演会
『緩和ケアがめざすもの』~東海中央病院 院長 渡邉正先生~
を受講してきました。

渡邉先生は七栗サナトリウム勤務以降、ターミナルケアの分野にはいられ、精力的に活動されてきました。
今日はここ20年程の緩和ケアの流れとこれからの方向性についてを教えていただきました。
ガンの患者さまをはじめ、様々な患者さまからの緩和ケアに対する期待が高まています。わたしも興味を持って勉強してきました。
6月
22
2011
今日はからヒブ(Hib)ワクチンと細菌性髄膜炎についてのお話しをします。
小さなお子さんをお持ちのお母さん方はすでにヒブ(Hib)ワクチンについてはご存知かと思いますが、3年ほど前から日本でも接種可能になりました。
○細菌性髄膜炎とは…
細菌性髄膜炎とは、細菌に感染してその後脳を包む膜(髄膜)にまで侵入し、脳の機能に障害を与えるものです。なお障害された機能は永久に取り戻すことができないことが多く、後遺症として残ります。
なおその原因菌としてはインフルエンザ菌(Haemophilus Influenzae)が一番多く、その中でもB型が最も強力な菌で、略してHib(ヒブ)と呼んでいます。それに対するワクチンなのでヒブワクチンというわけです。
○ヒブの症状は…?
ヒブの症状は飛沫感染により体内侵入し、最初発熱などの一般的な風邪症状を起こします。その後肺に進んでいき肺炎を起こし、脳の方に進んでいき髄膜炎をおこすといった具合です。そして場合によっては菌が身体中を駆け巡って、菌に完全にやられてしまう“敗血症”という状態になって死んでしまうケースがあります。
○インフルエンザとどう違うのですか…?
ところでインフルエンザというと、冬に流行するインフルエンザのことを思い浮かべる方も多いと思います。しかしインフルエンザ菌とインフルエンザは何の関係もありません。
実はインフルエンザ菌(Haemophilus Influenzae)は最初たまたまインフルエンザ患者さんから見つかりました。
しかし、その後インフルエンザウイルスが見つかり、インフルエンザの正体は後者だということが分かりました。その時点で名称変更すれば、こんなややこしいことにはならなかったのですが、そのままきてしまったため勘違いを起こしてしまうのです。
インフルエンザ菌とインフルエンザウイルス…間違わないようにしてくださいね。
今日はインフルエンザ菌とその症状についてのお話しでした。
6月
21
2011
今日はインフルエンザワクチンについてのお話しです。
○インフルエンザワクチンはどんな方に打つといのでしょうか?
インフルエンザワクチンは自己負担が必要なのは、もうお分かりかと思います。
これは必ずしも打つ必要がない“二類”定期接種に分類されているためです。ただし60歳以上の基礎疾患(…つまり持病のこと)を持つ方と65歳以上のすべての方には、自治体からの公費が支給されます。少々お安く打っていただけるというわけです。
これは高齢者はインフルエンザを重症化させやすいので、なるべく打ってほしいということからです。
ちなみにアメリカでは生後6カ月から5歳までは罹患しやすいとして、なるべく接種するよう呼びかけています。
○接種の実際
日本においては13歳未満の年少児は2回接種、一方13歳以上は1回接種となっています。これは、子どもは1回では免疫が十分に獲得できないことがわかっているためです。
しかも抗体が身体の中で出来上がるのは1カ月程度かかります。ゆえに接種はインフルエンザが蔓延し出す1カ月前に済ませるのが最適です。つまり10月中旬に接種をされることが良いということになりますね。
インフルエンザはポピュラーな疾患ですが、時に死にいたる病気です。ワクチン接種で未然に防ぐことをお勧めします。
6月
20
2011
高齢になるとどうもふらつくとおっしゃられる方がみえます。人は年齢が高くなると足腰が弱くなり、転倒しやすくなります。今日は高齢者と転倒・転落のお話です。
○転倒しやすい方とは…?
高齢の方といえど、転倒しやすい方とそうでない方が見えます。統計上そのような傾向があるのです。75歳以上であること、女性に多いこと、すでに転倒した経験があること、移動能力の問題などです。ちなみに移動能力の問題とは歩く能力のことで、歩行スピードが遅くなってくることと相関いたします。
○飲まれている薬剤も問題になります
高齢になると血圧の薬など毎日定期的にお薬を飲んでいる方がみえます。
その中でも睡眠剤が効きすぎていると、足元をふらつかせる要因になります。直接ご本人の問題ではないため、医療者側やご家族に注意が必要といえるでしょう。
○転倒予防にはどうしたらいいでしょうか?
転倒すると骨折し、寝たきりという生活が待っています。そのためには転倒しないようにすることが第一ですが、ではどうしたら転倒予防が出来るでしょうか?
地域に転倒予防教室というものが開講されています。これは地域包括支援センターという中学校区に1つある公的機関で行われております。こちらを利用されると良いと思います。
○もっと予防に力を入れたい方に…
教室でのレッスン以外にもっと力を入れて取り組みたい方も見えるかと思います。また、周囲のご家族で高齢の方が心配だという方も見えるでしょう。
この場合はやはり医療機関にお越しいただくのがいと思います。
高齢で転倒の可能性がある方ほど血液中のビタミンDが低下していると言われています。また季節的にビタミンDが低下するときに、転倒事故が発生することもわかってきました。
ビタミンDを補給する治療を開始するといいでしょう。しかもアメリカの医学雑誌にてビタミンDの補給で転倒予防の効果があったことが確認されています。
○ご自身で出来ることは?
更にご自身や身の回りの方で簡単にできることはないのでしょうか?
転倒しにくいつま先の上がった靴が購入できます。
また万が一転倒しても大腿骨頸部骨折を予防する“ヒップ・プロテクター”というものが既に発売されているので、積極的に活用されるのが良いと思われます。
6月
19
2011
風邪をひいたら病院で薬をもらって…。だれしもが経験することかと思います。
では、病院でもある薬の中には何が入っているのでしょうか?抗菌薬(抗生物質)、咳止め、痰切り…いろいろ入っていると思いますが、今日はその中でも抗菌薬(抗生物質)のお話です。
○まずは用語説明
最近、抗生物質のことを“抗菌薬”と呼ぶように変わりました。
これは、抗菌薬は細菌のみをやっつける薬であって、ウイルスを撃退する力はありません。しかし「抗生物質」というと何でも撃退するかのような誤解が生じる可能性があるからです。より現実に即した名前になったとみるべきでしょう。
○どんな時に飲むべきでしょうか?
では抗菌薬はどんな時に飲むべきなのでしょうか?
日本呼吸器病学会の「呼吸器感染症に関するガイドライン、成人気道感染症の基本的な考え方」には出現する症状のなかでも“3日以上の発熱が持続する”“膿性の喀痰・鼻汁”“扁桃肥大”“扁桃腺に白苔を認める”等の条件を挙げています。また中耳炎や副鼻腔炎の合併が認められる場合や採血で白血球増多、CRP増多等の所見も条件とされています。
もうひとつは社会的な条件として合併症として呼吸器疾患があったり、そもそも高齢者で体力的な余力がなかったりする場合も、やはり条件として存在します。
○どうして飲むべき時とそうでない時があるのでしょうか?
それは細菌が原因ではない場合があるからです。
通常風邪の場合ウイルスが原因である場合のほうが圧倒的に多いのです。この場合、ゆっくり体を休めて適宜咳止めや痰切りを使用したり、場合によっては解熱剤を使用するのです。抗菌薬は役に立たないので使いません。
逆に細菌、たとえばマイコプラズマ・クラミジア・肺炎球菌・インフルエンザ桿菌等の場合は抗菌薬の出番というわけです
風邪というとすぐに抗菌薬を使ってしまう風潮が日本から抜けきれません。不適正使用は耐性菌の出現や投与による肝機能障害など、さまざまな障害があります。一刻も早くそのような誤解が解けることを願っているのです。
6月
17
2011
きょうはポピュラーな感染症である、インフルエンザについてのお話しです。
○一般的な症状
インフルエンザは咽頭痛・咳・鼻水などの喉周辺の症状に加え、発熱・全身倦怠感・関節痛・筋肉痛をともないます。
また、乳幼児は中耳炎・熱性けいれんを合併したり、ときにインフルエンザ脳症という重篤な合併症をおこします。
逆に高齢者は肺炎を併発するケースが多く、それによって亡くなる方が見えるのが特徴です。
○診断と治療
インフルエンザを疑った方には鼻の中を綿棒でこすって、それを診断に役立てます。
これはウイルスがいるかどうかを確認するものですが、検査をするタイミングが発症から早すぎては診断を誤ってしまうという問題があります。
治療はご存知抗ウイルス薬を使うことが既に国内では定着していると思われます。
タミフルという5日間飲む内服薬と、リレンザ・イナビルという粉末状の薬です。
とくにイナビルは昨シーズン出てきた新薬で、1回吸引していただくだけで効果を発揮します。タミフルのように毎日飲むという煩わしさがありません。
次回はインフルエンザワクチンについてマニアな情報をお届けします。
6月
16
2011
今日はおたふくワクチンのお話しです。
○わが国では任意接種です
おたふくワクチン(ムンプスワクチン)は生後12カ月以上の未罹患の子どもを対象としています。ただし定期接種ではなく子どもの親の自己判断・自己負担、いわゆる“任意接種”の形をとっています。
○ワクチンの能力
おたふくワクチンは抗体陽転率(…つまり成功率)が90~95%と大変良い性能を持っています。せっかく接種しても抗体がつかない、一次性ワクチン不全(primary vaccine failure)の可能性が低いのです。
また地域での流行時や家族内で患者さんが出た際の有効率は75~90%と、こちらも大変に良い成績です。
○副作用は…?
ムンプスワクチン接種後の副作用としては、接種2~3週に一過性耳下腺腫脹や発熱が2~3%にみられます。
またかつて重篤な副作用としてアナフィラキシー・全身性蕁麻疹がありました。しかしこれはワクチンに含まれているゼラチンが原因であることが分かっており、現在は含まれていません。
しかしこのような歴史が定期接種から外れてしまった理由となって、いまに至っているのです。
○ムンプスワクチンの今後
ムンプスワクチンのこれからの課題の一つに定期接種化の復活があげられます。
一度おたふくに罹ると有効な抗ウイルス薬はなく、水痘の様に患者と接触した場合に発症を抑える緊急ワクチン接種も有効ではありません。
となると未然に防ぐことが一番であることは自明であり、定期接種復活が望まれます。
また最近ワクチンン接種後の効果が薄れてきたことによる、二次性ワクチン不全(secondary vaccine failure)が問題になっています。このため二回接種法をとりいれている国も多く、定期接種復活とともに検討すべきことといえます。
今回はムンプスワクチン(おたふくワクチン)についてのお話しでした。
6月
15
2011
今日は流行性耳下腺炎、いわゆる“おたふくかぜ”についてのお話です。
○まずは一般的な症状などのお話しから
おたふくかぜは人からひとへ、飛沫感染あるいは唾液による感染で広まってきます。
主に3~5歳の子どもに発症することが多く、16~18日くらいの潜伏期間を経て耳下腺の腫脹・疼痛を訴えます。そして3~7日くらいで軽快していきます。
なお、30~40%は不顕性感染といって、感染しても症状が出ずに終わります。
○恐ろしい合併症…
一方、おたふくかぜは深刻な合併症の可能性も秘めています。
髄膜炎や脳炎にかかると、ともにその頻度は低いものの死亡や深刻な後遺症を残す可能性があります。
また耳に感染すると難聴となり、永続的な障害として残るので注意が必要です。
○不妊症になるのでしょうか?
とくに男児がおたふくかぜになると“子どもが出来なくなる”ということをお聞きになったことがあるかと思います。
確かに思春期以降の男性患者の約25%は精巣炎を合併し、そのうちの30~40%に精巣委縮を残します。しかし不妊症にまで至るのは稀であると考えられています。
次回はおたふくのワクチンについてのお話です。
6月
14
2011
今日は水痘ワクチンについて少し詳しいお話をさせていただきます。
○ワクチン接種の実際
水痘ワクチンは患者さんの自由にまかされている“任意接種”です。そのため必要経費を自己負担していただかねばなりません。
ワクチンは0.5mlを1回皮下注射します。しかも感染した人(…多くは幼児ですが)に接触した場合、72時間以内ならワクチンを緊急接種することで発症阻止できます。
○ワクチンの有効性と安全性
水痘ワクチンは大変有効性が高く、抗体陽転率つまり成功率がとても高いワクチンです。
また接種後に水痘に罹患するケースが多くありますが、そのほとんどが軽症に済むことが知られています。
○水痘ワクチンの悲しい歴史
しかし“かつて”は水痘ワクチンで重篤な合併症を引き起こしたことがありました。それはワクチンの中に安定剤として含まれていたゼラチンによって引き起こされたのです。
ですが、今日のワクチンはゼラチンを含んでおらず、ゼラチン非含有製剤に代わってからは重篤な副作用の報告はありません。
水ぼうそうワクチンは大変に安全で、有効性の高いワクチンです。ぜひとも接種されることをお勧めします。